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メテオ・ストライクス!

いろんな分野で独り言を日々書きます。稼働終了したセガのクイズゲーム『Answer×Answer』を振り返る事もあります。

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『聖の青春』見てきました 

1998年8月9日。
まだ金沢市在住だった自分はその日、前の職場の仕事で中学生相手の夏期講習会の講師やらアシストやらやらねばならず、いやいや早朝に起床。
玄関に届いてる朝刊を取ってきて(お試し名目で3ヶ月だけタダで入れてくれてた)、着替えながら三面記事に軽く目を通していました。
…その片隅に載っていた訃報の衝撃は今でも忘れられません。
将棋棋士、村山聖(むらやまさとし)八段死去。
なんというか衝撃が大き過ぎて、その日一日はずっとその訃報の事を考えながら仕事をしていました。
その年、村山八段は病気療養の為に対局を一年間休場されてまして、じっくり休養して戻ってくるもんだと思ってましたし、羽生ファンの自分でしたが、同世代の村山八段の動向は常に気にしてましたので…。
業病と戦っているとはいえ、あれほどの実力がある、自分と同世代のまだ若い棋士が亡くなった。ああいう喪失感を味わったのは、村山八段が初めてだったかもしれません。

村山九段(死後追贈)の生と死は、各種メディア、特に将棋系メディアで大きく取り上げられました。
特に雑誌『将棋世界』の村山聖追悼号は大変な読み応えで、今でも本棚に保管してあります。
その後、大崎善生さんの書かれた力作『聖の青春』が反響を呼び、各賞を受賞。村山九段の生涯を語るうえでの基本線となります。
『聖の青春』を翻案して漫画化したのが、『聖-天才羽生が恐れた男-』。
漫画化したのは山本おさむ。あの、耳の聞こえない聾唖者の高校球児を描いた号泣名作漫画『遙かなる甲子園』で有名な方です。
始まった時に、この題材にこの漫画家って卑怯だろ…と思ったんですが、案の定読めば読むほどボロボロ泣ける漫画となりました。全9巻。先頃愛蔵版仕様全3巻で復刻してます。
(山本おさむさんは、奥様を村山九段と同じネフローゼからの病気で亡くされているそうです)
『聖の青春』は一度テレ朝系で2時間TVドラマになってます。村山九段を演じたのは………藤原竜也。あまりにも村山九段のイメージと違うので見ませんでしたw。だってねえ…。
メディア的な動きはそんな感じでしたが、亡くなられてから10年15年と経過し、将棋界における村山九段は、プロ野球における津田恒美的な形で語られるようになりました。
人気漫画『3月のライオン』にも、村山九段をモデルとする棋士が出てきたりもしています。
そして今年2016年、実写映画化の運びとなりました。

自分としては、一報を聞いた時にはそう期待してなかったんですが、役作りのため20kg増量したという松山ケンイチのスチール写真を見た時に「あ、これは本気だ」と思いました。
公開が迫ってくるに連れて、おそらく…原作通りではなさそうだなとは察しましたが、そもそもあの原作を、漫画でも全9巻の長さがあるものを2時間に落とし込むんですから、改変と端折りはやむを得ないでしょう。
公開が始まっても、なるだけネタバレは避けて楽しみにし(ネタバレというよりは、改変ポイントかな)、そして今日11月30日…見て参りました。

(有名原作モノですから問題無いかとは思いますが、とりあえずここからネタバレです)

ゴミ捨て場の横でスーツのまま倒れている村山聖が、親切なおっちゃんに関西将棋会館まで運んでもらって、フラフラと盤の前に座るや人が変わったように対局に挑む…というファーストシーンから始まる本作。
キャスティングの話からになりますが、松山ケンイチの村山聖っぷりは入魂の出来映え。元がいい男だもんで美化されてはいますが、ひねた性格でコミュ障、業病と生きながら将棋の高みを目指す姿がよく演じられています。
その村山が意識し続ける鬼神・羽生善治を演じる東出昌大がね、笑っちゃうくらい羽生なんですよw。棒みたいな喋り方もそうですが、対局中の所作がね、羽生モノマネ選手権かと思うくらい似てる。思わずニヤニヤしてしまいました。
クライマックスでこの二人が大一番を熱演するんですが、演技というより対局としていいシーンになっていたと思います。
村山聖の師匠で、終生暖かく見守り続けた森信雄役のリリー・フランキーが出色の出来。どっからどう見ても森師匠。看護婦に「その時は村山君の負けです」と静かに言うとこや、荒崎に電話で「村山君が亡くなりました」と淡々と話すとこが泣けて…。
エンディングテロップに"筒井道隆"と出て「え?誰役?」と思ってパンフ見たら、東京で村山を世話する雑誌編集長橋口(『聖の青春』を書かれた大崎善生がモデル)だったのも衝撃。久しぶりに見たら枯れた中年のいい演技になったねえ。
その他、村山の弟弟子の奨励会三段江川、村山の遊び仲間となる棋士荒崎(先崎学九段がモデル)、村山の父親など、配役は非常に良かったと思いますし、それが作品のグレードを上げています。

で、気になったのは…改変部分ですね。
この映画は、前にも書いたように2時間に落とし込むために端折ってあります。
そしてドラマチックにするために、あえて事実とは違う話にしてあります。ぶっちゃけて言えば、"目標でありライバルである羽生善治"という部分は、かなり改変してます。
これはもちろん、将棋史に輝く羽生善治という大スターを最大限に活かす脚本にして、集客に繋げたかったからに違いありません。それは見ていて痛いほどよく分かりました。(漫画版のサブタイトルだって"天才羽生が恐れた男"ですからね)
だもんで、普段将棋をあまり見ない方の感想はかなり良いです。七大タイトルを独占するような最強の棋士と、業病を抱えながら高い次元で戦える村山聖という構図ですから。
逆に、将棋通、将棋クラスタみたいな人は、改変されたところがどうしても気になるようです。自分が「ああ、変えたな」と思ったくらいですし。
具体的に言えば、村山聖が和服を着て羽生に臨んだタイトル戦(王将戦)。森師匠が写真撮りまくってましたけど、あのタイトル戦の本来の対戦相手は谷川浩司王将です。ですが、この映画では谷川浩司の出演シーンは羽生七冠誕生のとこだけ。
これはもちろん、ライバル羽生を際だたせる為に他の実力者を描写しないからですけど、事情を知っていると「タニー出番無しかよ」と思わざるを得ません。
当時の関西のトップは谷川浩司で、村山の目標はどっちかというと谷川の方だったという事情もありますんで、…知っていると複雑な気分になるところです。
また、クライマックスの羽生との対局もタイトル戦のような演出がされてましたが、二人の最後の対局となった死闘はTV中継のある「NHK杯」で、そこで羽生を追い詰めながら…秒読みに追われて勝ち筋を見落とすというドラマチックな幕切れでした。
タイトル戦の格調もいいですが、意外と事実にのっとってTV対局での死闘にした方が良かったのでは…とも思います。
まあ先述の通り、普段将棋に縁の薄い方には概ね好評なんでなんとも言えないとこですけどね。
村山が話すエピソードの相手を変えるのは、なるほど…と思いながら見てました。一度は女を抱きたいと話したのは羽生じゃなく先崎ですけど、こういうのはドラマですからね。
(食堂で村山と羽生が話すシーンは良かったと思います)

あと意外だったのは、子供時代のエピソードをさらっとしか出さなかったことですね。
ネフローゼと診断され、入院生活の中で将棋と出会うとこまでは見せましたけど、同室の子供が亡くなっていく中で村山聖の死生観が出来上がっていく流れがあるので、それなりに尺をとると思ってたんですけど。
まあ、あまり子役の演技ばかり続くと別物の映画になっちゃいますけどね。致し方なし。

平日の昼間に見たんですが、20人余りのお客さんがいました。結構話題になっているようです。
8割は将棋に興味がある人だとしても、残り2割に「将棋界」というものが伝わってくれると嬉しいんですよ。
映画の中で描写される、将棋会館なる建物、控え室検討の雰囲気、タイトル戦、タイトル戦の大盤解説会に集まってくる将棋ファン、盤を挟んで死闘を繰り広げる棋士という職業、そしてその棋士になれるかどうかの瀬戸際で足掻く奨励会三段リーグという存在…。
こういう人間くさい要素で出来上がっているのが…将棋界というものですからね。
ちょっとでも興味を持ってもらって、羽生善治が恐ろしい存在だと一端でも理解してもらえればいいな、と。
(だから、この映画が羽生善治ライバル設定で通したのは間違いではないのです)
普段縁の無い方も楽しんで見れるはずですし、泣き所もある映画です。興味が湧いたらぜひとも劇場へ。
同世代のおっさんとして、こういう生き方をした人がいた、と知ってもらえると嬉しいです。
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2016/12/01 Thu. 03:16 | trackback: 0 | comment: 0edit

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